4月に昇給を行った会社も多いと思いますので、健康保険と厚生年金保険の月額変更届についてお話ししたいと思います。
健康保険、厚生年金保険は被保険者資格取得時に届け出を行った報酬月額を元に標準報酬月額が決定され、その後年1回の定時決定と育児休業等が終了したときの改定によって 見直しが行われます。
ただ、この年1回の定時決定では実情に合わなくなって しまうため、大幅な給与の変動があった時には実情に合った標準報酬月額となるように随時改定を行います。
随時改定の要件
随時改定は、以下の3つの要件をすべて満たしたときに行います。
① 固定的賃金に変動があった
② 固定的賃金の変動があった月以後引き続く3か月間に受けた報酬の平均月額に基づく標準報酬等級と現在の標準報酬等級との間に2等級以上の差が生じたとき
③ 該当した3か月とも報酬支払基礎日数が17日以上であるとき
随時改定の3つの要件を順に見ていきます。
① 固定的賃金に変動があった
固定的賃金とは、毎月支給される支給額や支給率が稼働実績に関係なく決まっている賃金です。
例えば、残業代は稼働実績に応じて支払われるものですから、3か月連続で残業代が大幅に増加した場合でも、その他の賃金に変動がなければ固定的賃金の変動ではないため、随時改定は行いません。
同様に、2023年4月の法改正により60時間以上の時間外割増賃金率の変更を行ったことによる変動も固定的賃金の変動には当たりません。
② 固定的賃金の変動があった月以後引き続く3か月間に受けた報酬の平均月額に基づく標準報酬等級と現在の標準報酬等級との間に2等級以上の差が生じたとき
この要件に関して、いくつか気を付けたい点があります。
現在の標準報酬等級と比較する3か月間に受けた報酬の平均月額
この比較に使用する報酬とは、固定的賃金のみではなく、非固定的賃金も含めて計算します。
また、固定的賃金の変動と非固定的賃金の変動の増減の 方向が異なる場合には以下の表にあるように、 随時改定を行わない場合がありますので留意が必要です。
固定的賃金 | 非固定的賃金 | 等級の変動 | 随時改定 |
増加↑ | 増加↑ or 減少↓ | 2等級以上↑ | 行う |
増加↑ | 減少↓ | 2等級以上↓ | 行わない |
減少↓ | 増加↑ or 減少↓ | 2等級以上↓ | 行う |
減少↓ | 増加↑ | 2等級以上↑ | 行わない |
*固定的賃金と等級の変動の方向が同じ場合のみ随時改定を行う
標準報酬等級が上限、下限の人は、2等級以上の差が生じなくても随時改定をする必要がある場合がある。
③ 該当した3か月とも報酬支払基礎日数が17日以上であるとき
定時決定時とは異なり、1か月でも17日未満の月がある場合には、随時改定は行いません。パートタイマーも同様です。
なお、特定適用事業所または任意特定適用事業所の短時間労働者は支払基礎日数が11日以上の月が3か月続き、ほかの要件が該当した時に随時改定となります。
改定のタイミング
随時改定に該当した時には、4か月目から標準報酬月額が改定されます。
例えば、4月に固定的賃金に変動があり、4月、5月、6月の報酬支払基礎日数がいずれも17日以上、3か月の平均の報酬から算定した標準報酬月額が現在と2等級以上の差が生じた場合には、7月から標準報酬月額が改定されることとなりますので、7月のなるべく早い時期に届け出を提出します。